高配当株の売却判断|理論株価でシナリオを考える

売却

結論|理論株価を使い、株価上昇時の対応を事前に考える

高配当株は、配当を受け取りながら長く保有したい一方で、株価が大きく上がると「このまま持ち続けてよいのか」と迷うことがあります。

高配当株の売却タイミングに迷っている方に向けて、私が設定している「配当金20年分」の目安と理論株価を19銘柄で比較しました。2つの水準のどちらが先に来るかを具体例で確認し、株価が上昇したときに売却するか、保有を続けるか、事前にシナリオを考える方法を紹介します。

【この記事で整理していること】
・累進配当など19銘柄を比較した結果
・ 理論株価と「配当金20年分」の関係
・比較結果を踏まえた、私の今後の売却判断

※本記事は、私自身の投資経験や考え方をもとにした個人的な見解です。掲載している株価・配当金などは特定時点の情報をもとにしています。投資判断の際は、最新の情報をご確認ください。

19銘柄で理論株価と「配当金20年分」を比較してみた

今回の比較方法と対象銘柄

今回は、前回紹介した減配しにくい銘柄で紹介した19銘柄を対象に、現在の株価と「理論株価」「配当金20年分を含めた株価」を比較しました。
※株価は表管理シートのNumbersで9月末時点のものを使用し、BPSとEPSは前期公表値、配当金は今期予想値を使っています。

売却目安について詳しく知りたい方へ
高配当株の株価が上昇した際に、私は配当金20年分程度を売却検討の目安としています。この目安を設けた理由や、実際の売却についての考え方は、以下の記事で紹介しています。
▶︎ 高配当株は売るべきか|配当20年分で考える売却目安と失敗談

理論株価は、前回の記事で紹介した『増配株投資 年1075万円もらう 資産3.7億円の投資家が教える!(KADOKAWA)』で紹介されている考え方を使って計算しました。今回は計算式そのものではなく、実際に保有銘柄へ当てはめた結果を比較しています。

「配当金20年分を含めた株価」は、現在の株価に来期予想の年間配当金20年分を加えて算出した、今回の比較用の基準値です。なお、宮地エンジニアリングは前回の記事を公開した時点では非減配銘柄でしたが、その後、減配が公表されたため、今回の比較対象から外しました。

銘柄選びの視点を広げたい方へ
『増配株投資』を読んで、小型株に注目する理由や、割安かどうかを自分で考える視点について学んだことをまとめています。
▶︎「増配株投資」を読んだ感想|小型株・割安株の考え方を学んだ

19銘柄を比較した結果

今回の比較結果は、以下のとおりです。
※本記事では、2026年9月末時点の株価をもとに、理論株価と「配当金20年分を含めた売却目安株価」を比較しています。実際に売却を検討する際は、購入時の株価を基準に売却目安を計算し、理論株価との関係を確認します。

コード銘柄株価理論株価今期予想配当額配当金20年分含む目標株価理論株価-20年分株価
累
進
配
当
1605INPEX¥3,611¥7,382¥112¥5,851¥1,531
1870矢作建設¥2,123¥3,727¥110¥4,323▲¥596
2060フィード・ワン¥1,429¥3,279¥52¥2,469¥810
2153E・Jホールディングス¥1,872¥4,133¥72¥3,312¥821
4528小野薬品¥2,333¥3,295¥80¥3,933▲¥638
5911横河ブリッジHD¥2,931¥5,603¥130¥5,531¥72
8031三井物産¥4,916¥6,005¥140¥7,716▲¥1,711
8058三菱商事¥4,722¥4,688¥125¥7,222▲¥2,534
8309三井住友トラストグループ¥1,779¥2,406¥48¥2,729▲¥323
8316三井住友フィナンシャルグループ¥3,383¥8,255¥90¥5,183¥3,072
連
続
増
配
1928積水ハウス¥3,370¥6,881¥120¥5,770¥1,111
3003ヒューリック¥1,720¥2,708¥67¥3,060▲¥352
8593三菱HCキャピタル¥1,325¥2,515¥51¥2,345¥170
8725MS&ADインシュアランスグループホールディングス¥4,886¥9,322¥140¥7,686¥1,636
9433KDDI ¥2,931¥3,169¥84¥4,611▲¥1,442
非
減
配
1802大林組¥2,982¥4,325¥94¥4,862▲¥537
3431宮地エンジニアリング ¥1,508¥2,846¥75¥3,008▲¥162
4042東ソー¥2,645¥4,025¥100¥4,645▲¥620
8306三菱UFJフィナンシャル・グループ¥3,586¥4,105¥96¥5,506▲¥1,401
8591オリックス¥5,911¥8,073¥156¥9,033▲¥960
※E・Jホールディングス:記念配当除く、MS&ADインシュアランスグループホールディングス:特別配当除く

19銘柄のうち、理論株価が「配当金20年分を含めた株価」を上回ったのは6銘柄でした。
一方、13銘柄は「配当金20年分を含めた株価」の方が理論株価を上回る結果となりました。

実際に数字にしてみると、銘柄によって差はかなり異なります。横河ブリッジHDのように2つの水準がほぼ同じ銘柄もあれば、三菱商事のように大きく離れている銘柄もありました。

この結果をもとに、次のパートでは、2つの水準のどちらが先に来るかによって、売却を考える場面がどう変わるのかを、具体的な銘柄を使って整理します。

比較結果から、売却を考える場面を整理する

今回の比較で確認したかったのは、2つの株価のどちらが高いかだけではありません。
私が知りたかったのは、株価が上昇したときに、どの水準で売却を検討することになるのかという点です。

そこで、理論株価と「配当金20年分を含めた株価」のどちらが先に来るかを、具体的な銘柄で見てみます。

理論株価が「配当金20年分」を上回る銘柄

理論株価が「配当金20年分を含めた株価」より高い銘柄では、現在の株価から上昇した場合、先に「配当金20年分」の水準に到達します。
例えばINPEXは、株価3,834円に対して、理論株価は7,382円、「配当金20年分を含めた株価」は6,074円でした。この場合、株価が6,074円まで上昇すれば、私が設定している売却目安に達します。一方、理論株価は7,382円なので、その時点ではまだ理論株価まで距離があります。

つまり、企業の収益力から計算した理論株価より先に、私自身の売却目安が来るケースです。

こうした銘柄については、その水準まで株価が上昇したときに、売却するのか、配当を受け取りながら保有を続けるのかを考えることになります。

私の場合は、入金力が限られているため、評価益を確定して別の銘柄へ再投資することにも意味があります。そのため、このような銘柄は「売却を検討する水準が比較的近い銘柄」として把握しておきたいと考えています。

理論株価が「配当金20年分」を下回る銘柄

反対に、理論株価が「配当金20年分を含めた株価」より低い銘柄では、理論株価の方が先に来ます。

例えば三菱商事は、株価4,811円に対して理論株価が4,688円、「配当金20年分を含めた株価」は7,311円でした。この場合、株価が理論株価まで上昇しても、私が設定している「配当金20年分」の水準にはまだ届きません。

そのため、理論株価を超えた段階で、そこで売却を検討するのか、それとも配当を受け取りながら保有を続けるのかを考えることになります。

私自身は、こうした銘柄について「理論株価を超えたから売る」と決めるのではなく、その企業を今後も保有したい理由があるのかを確認したうえで判断したいと考えています。

このように2つの水準をあらかじめ確認しておくと、株価が上昇したときに、その場で初めて売却を考えるのではなく、自分がどの水準で何を確認するのかを事前に整理しておけます。

私の高配当株投資では、理論株価を売却判断の材料に加える

『増配株投資』を読んだときは、理論株価という考え方に納得感があり、割安・割高を考える手法の1つとして考えていました。

その後、自分の投資ルールの中でどう使うかを考えてみました。

PERやPBRなどの指標でも割安・割高を確認できます。証券会社のサイトなどで簡単に確認できるため、買う銘柄を選ぶためだけに、毎回理論株価を計算する必要があるのかという疑問もありました。

一方で、今回のように「保有している銘柄をいつ売るか」を考える場面では、理論株価を確認する意味があると感じました。

私はこれまで、高配当株について「配当金20年分程度まで株価が上昇したら売却を検討する」という目安を設けています。

これは、株価が上がったから利益を確定したいというだけではありません。今の自分は入金力がまだ十分ではないため、評価益を確定して別の銘柄へ再投資し、将来の配当額を増やしたいと考えているからです。

そこに理論株価を加えることで、「自分が売却を検討する水準」と「企業の収益力から考えた理論株価」を並べて確認できるようになります。

今回、実際に19銘柄を計算してみたことで、この使い方なら自分の投資ルールにも取り入れやすいと感じました。

今後は、保有銘柄の株価が大きく上昇したときに、その場で売るかどうかを考えるのではなく、あらかじめ理論株価と自分の売却目安を確認しておきたいと思います。

もちろん、理論株価は実際の株価が必ず到達する価格でも、そこを超えたら売却する価格でもありません。業績や市場環境によって株価は変わりますし、今回の計算も特定時点の数値に基づいています。

そのため私にとって理論株価は、売却を機械的に決めるルールではなく、保有銘柄を見直すときの判断材料の一つとして使っていくつもりです。

【注意】
※本記事で紹介している理論株価や「配当金20年分」という考え方は、私自身が保有銘柄を見直すために設定している目安です。将来の株価や配当を保証するものではありません。投資を行う際は、ご自身の判断でお願いします。